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2019年4月期にテレビ東京系で放送された人気ドラマを映画化した「劇場版 きのう何食べた?」が11月3日より公開され、初日だけで観客動員数12万人、興行収入1.6億円を超える好スタートを切った。

俳優の西島秀俊(50)と内野聖陽(53)がダブル主演を務め、山本耕史(45)、磯村勇斗(29)に加え、劇場版ではSixTONESの松村北斗(26)が追加キャストとして参加している。

「きのう何食べた?」はいわゆるゲイ同士の恋愛を描いた作品だ。18年4月期に放送された「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)や、20年10月期の「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称:チェリまほ)」(テレビ東京系)を筆頭に、ボーイズラブ(BL)作品は一般市場に普及し、人気となる作品も多くある。

現在放送中のドラマ「消えた初恋」(テレビ朝日系)も、SnowManの目黒蓮(24)となにわ男子の道枝駿佑(19)がダブル主演を務め、見目うるわしい二人によって展開される青春胸キュンBL作品に仕上がっている。


BL作品といえば日の当たらないところで、「腐女子」「腐男子」と呼ばれる人たちが熱量を持って支えてきたニッチなコンテンツという印象だったが、いつから“王道作品”になったのだろう。ちなみに、男性同士の恋愛を扱った作品愛する女性のことを「腐女子」、男性のことを「腐男子」と呼び、この呼称は主に05年頃からメディアなどでも取り上げられ、一般的に認知されるようになった。

■流れを変えた「おっさんずラブ」

やはり大きく流れを変えたのは「おっさんずラブ」だろう。今までBL作品に触れたことがない人たちが、純粋に「ドラマ」「フィクション」としての「男同士ならではの切なさ」を描いた「初心者入門編ボーイズラブ作品」を楽しむようになり、そこから様々な方向性のBL作品が映像化されていった。


関ジャニ∞の大倉忠義(36)と俳優の成田凌(27)がダブル主演した20年公開の映画「窮鼠はチーズの夢を見る」では、ハードな男性同士の濡れ場も描かれ、「ただの同性愛」と言い切るのをためらってしまうほど、生々しい「人間同志の愛」が表現されている。


気軽に見られる「おっさんずラブ」や「チェリまほ」だけでなく、見ていて胸が苦しくなるような作品など、その多種多様な振り幅だけでもBL作品と一言でまとめられない奥深さが存在している。ドラマなど映像化される作品は基本的に現実世界の延長線上で描かれることが多いが、日本のBL作品はあり得ないようなファンタジー設定の作品や、アニメや漫画などの二次創作作品、実在する芸能人同士のカップリングを楽しむ「ナマモノ」枠など、とにかく種類が豊富で、それはフィクションであることを前提として作られているからだろう。


■BL=LGBTQを描いているとは言い切れない

「もちろん話題になる日本のBLドラマはストーリーも面白いし、考えさせられる部分もありますが、やはり大衆向けに作られているなあと思います。ちなみに今タイのボーイズラブ作品が、腐女子界隈でも流行っています。脚本やキャスティングなど、ドラマとして質が高く、同性でありながら互いを愛してしまう過程をとても丁寧に描く作品が多いんです」

同性同士の恋愛を丁寧に描く過程は、性に寛容なタイだからこそ成せるものだろう。タイは男女の性別だけでなく18の性のカテゴライズが存在しているという。


LGBTQという言葉も普及し始め、多様性と謳われてもいるが、あくまで現行のBL作品は「エンターテイメント性」を重視し作られたフィクションであるということを念頭に置くこと。

話題となるボーイズラブ作品の多くはあくまでフィクションであり、それを「セクシャルマイノリティのリアルである」と勘違いして、真の多様性に対する理解を遠ざけることは避けなければならない。

だが、市場にBL作品が当たり前のように並ぶことは「多様性」を実現する上で、これからの布石になるかもしれない。

作成日時: 2021-11-25 18:52:04